事業を始めるとき、商品やサービスに付ける「名前」は欠かせないものです。
しかし、その名前を法律的に守る仕組み=商標権を確保していないと、せっかくの努力が無駄になるリスクがあります。ここでは、商標権の基本と取得の重要性を整理します。
商標とは何か
商標とは、商品や役務(サービス)を他と区別するための文字・図形・記号などの「識別標識」を指します。
平成27年4月からは音商標(メロディやサウンドロゴなど)も登録可能となり、登録対象の幅は広がっています。
商標権は「識別標識」と「それを使う商品・役務の範囲」という組み合わせで登録されます。
商標法によれば、①登録済みの商標と同一または類似の標識を ②登録済みと同一または類似の指定商品・役務に無断で使うと商標権侵害となります(商標法25条、37条1号)。
さらに、すでに同一または類似の商標が登録されている場合、同一または類似の商品・役務に対して行う新たな出願は審査の段階で拒絶されます(商標法4条1項11号)
一方で、識別標識が同じであっても、指定商品・役務が全く異なれば、原則として商標権侵害にもなりませんし、先登録商標理由として拒絶されることにもなりません。
たとえば「家庭用ゲーム機」で先登録されている商標に対して、かかる商品とは無関係な「ゴムひも」に使う場合は、商標登録が認められる可能性があります。
事業に商標権が不可欠な理由
事業を成功させるには、まず商品やサービスを顧客に知ってもらうことが必要です。
覚えやすい名前を付け、広告・宣伝を重ねて認知度を高めていくのが一般的な戦略です。
ところが、もしその名前が他社の商標権を侵害していた場合、警告を受けて名称を変更せざるを得ない事態が起こります。
すると、それまで投じてきた広告費やブランドの信用が一気に失われる恐れがあります。
このリスクを避けるためにも、事業開始時点で商標権を取得することはほぼ必須といえます。
積極的な宣伝が不要でも商標権は役立つ
積極的な宣伝をしないという事業者においても、ホームページや名刺などで社名やロゴを使う際、これが商標的使用とみなされるケースもありえます。
万が一紛争に発展した際は、「商標的使用ではない」と反論できる場合もありますが、かかる紛争に巻き込まれるリスクを抱えるくらいなら、商標登録をしておく方が安全です。
会社設立前から検討するのが理想
事業を法人化する際には商号(社名)を決めて登記しますが、その段階で商標の視点を欠かさないことが重要です。
商号を決める際に「商標登録が可能か」を調査し、開業前から商標出願しておくのが望ましいでしょう。
まとめ:事業活動において商標はとても重要
- 商標権は、商品やサービスのブランドを独占的に守る権利。
- 他者の登録商標に抵触すれば、商品名変更や広告費損失など大きなダメージを受ける可能性がある。
- 自社の規模や業態を問わず、設立準備段階からの取得が最も安全。
事業の成長やブランド構築を考えるなら、商標権の取得は「後回し」ではなく最初の一手として計画すべきです。