審査基準の進歩性について具体例で考えてみる。

1 特許庁の審査基準
  特許庁では、審査が平等になされるように、審査基準を公表しています。(特許の審査基準は、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/index.html)
当然、進歩性についても基準が公開されています(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0202bm.pdf)

2 概要
  正確なところは、上記のリンクを見ていただければよいかと思うのですが、まとめると進歩性判断の概要は、以下のようなところになろうかと考えられます。
●主引例と副引例を組み合わせる動機付けがあるか?
 -技術分野の関連性or課題の共通性or作用・機能の共通性or内容中の示唆から総合的に動機付けができれば進歩性否定の要素
 -組み合わせることに阻害要因があれば動機付け否定、進歩性肯定の要素
●設計事項・単なる寄せ集めであれば進歩性否定の要素
 -設計事項:公知材料の中からの最適材料の選択or数値範囲の最適化又は好適化or均等物による置換or技術の具体的適用に伴う設計変更・設計事項採用
 -単なる寄せ集め:公知技術を互いに機能的にor作用的に関連せず組み合わせたもの
●上記で進歩性否定に働いても顕著な効果があれば進歩性肯定の要素

3 iPhoneのロック解除特許の途中のやり取りで考えると…
前の記事で、iPhoneのロック解除特許と進歩性について触れましたが、本願特許と引例の概要は以下の通りです。
本願特許(修正前):アンロック画像の接触+アンロック領域まで接触を維持してスワイプするとロック画面が解除される
本願特許(修正後):アンロック画像に接触したままアンロック領域までスワイプするとロック画面が解除される
引例1(先行技術):タッチパネルで特定のジェスチャ(例えばダブルタップ)をするとロックが解除される
引例2(先行技術):トリガー操作(例えばタップ)をすると方向ポインタが表示され方向ポインタに沿って操作すると特定のコマンドが実行される

4 iPhoneのロック解除特許で見てみると…(私見入ってますので参考程度に)
審査基準の進歩性に照らして、iPhoneのロック解除特許(途中までのやり取り)をまとめると、以下のような感じかと思います。
(1)ア:引例1と引例2を組み合わせても本願発明(修正後)にならない
・アンロック画像へ接触し続けてスワイプする点が違う(引例1+引例2だけでは想到できない)
(上記によりアンロック画像の表示によりどれをタップすればよいかというユーザビリティが増すとともに、タップし続けてスワイプすることは誤作動防止の効果がある)
(1)イ:阻害要因による動機付け否定
・引例2を方向ポインタに触れながら操作する場合、ジェスチャ入力は一般的に相対的に操作するので引例1に引例2を組み合わせることは阻害要因がある
(2)特に有利な効果があること
・引例1はジェスチャの例としてダブルタップのみが示されている
・引例2は通常運転時のコマンド入力だけで持続的に接触の記載なし
→誤作動防止という有利な効果は引例1と引例2からは導き出せない
(3)設計事項・単なる寄せ集めではないこと
・「最適材料の選択」についていずれにも持続的な接触の維持の記載はないから最適と判断できない
・「設計変更」について引例1には画像を用いたアンロック制御について全く開示がないので引例2の適用は設計変更にあたらない
・引例単体に記載されているものではないので「単なる寄せ集め」にも当たらない(操作の検出→コマンド実行→アンロックの過程でコマンド実行が重複しているので、機能的にor作用的に関連している)
(4)課題の共通性、作用・機能の共通性がないので組合せの動機付けがない
・引例1はロック中にアンロックのコマンドを入力するものであり、引例2はアプリケーション動作中のコマンド入力が示されているものであるから(アンロック中のコマンド入力に関するものではないから)組み合わせが容易ではない。(上位概念の画面への入力操作という側面では技術分野の関連性があるかもしれないが、アンロック化という下位概念まで掘り下げると、課題の共通性・作用、機能の共通性がない)