iPhoneには、画面ロック中にロック解除するための特許第5457679号(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2008-547675/10/ja)という特許があります。
この特許は経緯が長いので、審査の過程における特定の部分だけのやり取りと進歩性との関係を見てみたいと思います。
以下、分かりやすくするため、正確ではありませんが、できるだけ簡潔にポイントを絞って分かりやすい趣旨ということでご承知おきください。
1.ロック解除特許(本願特許)と引例
本願特許(補正前):アンロック画像の接触+アンロック領域まで接触を維持してスワイプするとロック画面が解除される
本願特許(補正後):アンロック画像に接触したままアンロック領域までスワイプするとロック画面が解除される
引例1(先行技術):タッチパネルで特定のジェスチャ(例えばダブルタップ)をするとロックが解除される
引例2(先行技術):トリガー操作(例えばタップ)をすると方向ポインタが表示され方向ポインタに沿って操作すると特定のコマンドが実行される
2.特許庁の判断
特許庁の審査官は、公開文献をもとに、新規性のある特許出願においても、ある技術とある技術を組み合わせると、出願にかかる特許は容易に創作可能だと認定できる場合には進歩性を否定する判断をします。
本願特許について、審査官は、本願特許(補正前)は、引例1と引例2を組み合わせれば、容易に想到できるから、進歩性がないよ、と判断しています。
3.Apple側の対応
特許庁の判断に対して、Apple側は、本願特許(補正前)に補正をして、以下のように進歩性がある旨の主張をしています。なお、この後、特許庁は引例を変えているので、下記のAppleの主張を認めていると考えられます。
(Apple側の補正によって、補正前と比較して補正後は、アンロック画像をタップしたままスワイプするという構成が明確になっています。)
(1)
・アンロック画像をタップし続けてスワイプする構成は引例1,2にない(引例1,2と違いがある)ので、組み合わせても本願特許(補正後)を実現できない
(上記によりアンロック画像の表示によりどれをタップすればよいかというユーザビリティが増すとともに、タップし続けてスワイプすることは誤作動防止の効果がある)
・引例2を方向ポインタに触れながら操作する場合、ジェスチャ入力は一般的に相対的に操作するので(敢えてアンロック画像をタップし続けるという発想にはならず)、引例1に引例2を組み合わせることに(阻害要因があるので)動機づけがない
(2)
・引例1はジェスチャの例としてダブルタップのみが示されており、引例2は通常運転時のコマンド入力が示されているだけで、画像をタップし続ける構成の記載がないから、これらの組み合わせから誤作動防止という有利な効果を導き出せない
(3)
・引例1はロック中にアンロックのコマンドを入力するものであり、引例2はアプリケーション動作中のコマンド入力が示されているものであるから(アンロック中のコマンド入力に関するものではないから)組み合わせが容易ではない。
4.まとめ
上記からわかるように、既にありそうな技術であっても、既にある技術との違いやその違いによる効果などをうまく説明できると、進歩性が肯定され、特許査定に導くことが可能になります。