近年、AI(Artificial Intelligence:人工知能)の進化は驚くほどのスピードで進んでいます。
人間のような完全な思考は難しい部分もあるものの、決められた作業であれば人間より高速かつ正確にこなし、応用的な処理や人間には不可能な分析さえ可能になりつつあります。
このようなAIの進歩を支えている「コア」は何でしょうか。
多くの方がLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)などのモデルそのものを思い浮かべるかもしれません。しかし、モデルを動かすために欠かせないのが学習用データです。
AIを理解するうえで、この「データの重要性」を押さえておくことが非常に大切です。
LLMとデータ:AI開発の出発点
現在のAIの主役ともいえるLLMは、膨大な文章データを学習して初めて力を発揮します。
大規模なLLMを一から構築するのは、資金力・計算資源・人材の面で大手IT企業でなければ難しい側面があります。
しかし、既存のLLMを活用して自社向けに調整(チューニング)することで、中小企業やスタートアップベンチャーでも十分に競争力を持つことが可能です。たとえば業務効率化や人件費削減につなげれば、利用者側であっても競合他社に対して優位に立つことができます。
また、特定の分野に特化したデータを持っている場合、そのデータを活用して、中小企業やスタートアップベンチャーでも競争力を持つことが可能です。大手IT企業は現段階では汎用的な処理をターゲットにしていることが多いからです。
第3次AIブームと深層学習の躍進
現在のAIブーム(第3次AIブーム)は2000年頃から始まりました。
特に注目されているのが深層学習(Deep Learning)です。これはニューラルネットワーク(Neural Network)という仕組みを使い、入力データを学習して最適な出力を導き出します。
2000年頃のニューラルネットワークは計算資源やデータが限られていたため、せいぜい数層の単純な構造でした。
しかしインターネット上のデータが爆発的に増え、計算能力も飛躍的に向上した結果、多階層かつ大規模な学習が可能となり、人間に迫る性能を実現するに至りました。
かつて主流だった統計的モデル
深層学習が脚光を浴びる以前、AIの世界では統計的モデルによる手法が中心でした。その他にも、SVMという手法もニューラルネットワークと同じように注目を浴びていた手法の一つでした。
- 統計的モデル
入力と出力の間に統計的な関係があると仮定し、例えば正規分布(ガウス分布)を組み合わせて複雑なパターンを表現します。 - SVM(Support Vector Machine)
データを複数のクラスに分類するために、特徴に応じた境界線を高次元空間に引くことで分類を可能にする手法です。
これらはいずれも「仮定に基づくモデル化」と「学習データによる最適化」が基本であり、データが不可欠という点は深層学習と同じです。
まとめ:AIはデータが命
AIの進化を支えているのは、最先端のアルゴリズムだけではありません。
学習に使うことのできる良質で大量のデータこそが、AIの性能を決定づける最大の要素です。
これからAIを導入・活用しようとする企業や個人にとって、どのようにデータを集め、整理し、活用していくか――この視点を持つことが、将来の競争力を左右する重要なポイントとなるでしょう。