1 何が有益な情報か
生成AIの精度が日を追うごとに向上し、これからは何かの業務を行うに際しても、AIとの関係は切っても切れない関係になると思われます。
その中で、生成AIの性能向上のためには学習データが欠かせません。したがって、あるタスクを実行させようとしたときに、それを人間が行ったデータがあるとすれば、生成AIの学習データとして用いることが可能という観点では非常に重要なデータです。
例えば、取引データが、実は将来の需要予測において重要な学習データになるかもしれませんし、発注データがある契約の対価の相場を予想する上で重要な学習データになるかもしれません。
したがって、常に、AIの学習データになり得るか、という観点で、データの重要性には気を付ける必要があると思います。
2 データが法律上保護されるのか
(1)著作権法の観点
著作権法の観点では、著作権法30条の4によってAIの学習データとして利用する分には著作物の利用が許容される幅が広いため、学習データとしての利用を禁止する側面での効果は低いと思われます。したがって、例えば図面データなどがある場合、これを第三者が入手できてしまう場合に、勝手に学習データとして利用されたとしても、著作権法に基づく権利行使はかなり難しいと考えられます。
(2)契約の観点
契約の観点では、例えば、第三者のシステムを利用することにより、重要なデータを第三者のサーバに預けてしまう場合、秘密保持契約などを締結するとともに、AIの学習のためにデータを利用しないことを契約条項として定めておくことが重要だと思います。
ただし、契約違反がされた場合、あくまで債務不履行に基づく損害賠償請求ができるだけで、なかなか契約に基づく差止請求はハードルが高いと思います。差止請求は、物権の場合には一般的に認められ、また、知的財産権のように物権類似の権利の場合にも法律上認められています。しかし、債権関係で差止請求が認められる例は実務上もほとんどないように思いますので、その点は留意が必要です。
(3)不正競争防止法
上記のように、契約違反がある場合には、損害賠償請求は可能である一方で、差止請求は難しい可能性が高いのが現状ですが、不正競争防止法に基づけば差止請求の余地が出てきます。例えば、契約で秘密保持契約を締結しておけば、営業秘密として守られる可能性がありますし、そうでなくとも、限定提供データとして守られる可能性があります。そして、差止請求が認められる場合には、不正に利用された学習データを用いて作成されたAIの学習モデルも差止(廃棄・除却)が認められる可能性があるため、実効性が大きいと考えられます。
したがって、不正競争防止法で保護されるためにも、データに関する秘密保持義務を定めておくことや、AIの学習データに利用することを禁止することを契約上定めておくことは重要と思います。
(4)その他の観点
そもそも論ですが、「データが重要」という観点で考えると、データの重要性をランク分けしていき、絶対に外部システムを利用しないようにするデータ、外部システムを利用するもののデータ保護の必要性があるデータ、学習データに用いられても差支えないデータなどにランク分けして、利用の仕方を考えておく必要があると考えられます。